インタビュー

我々が目指す地域の未来に向けて、
これからも協業パートナーのみなさんと
共に歩んでいきたい

西粟倉村役場

地方創生特任参事 上山隆浩さん
産業観光課 白籏佳三さん

課題

  • 地産電力を活用した脱炭素実現へのノウハウ不足
  • 地域内で脱炭素を通じた雇用創出

ソリューション

  • 2050年脱炭素達成に向けた事業モデルの立案
  • 社員の派遣によるノウハウ提供

インパクト

  • 西粟倉村および他民間企業との共同出資により、エネルギーの地産地消を目指す新電力会社「西粟倉百年の森林でんき」を設立
  • 社員の派遣による事業推進と活性化
  • ふるさと納税における地産電力の返礼品など新規事業を開始
岡山県にある人口約1,360人の西粟倉村。村の面積の93%を占める豊かな森林を活かした「百年の森林構想」や、再生可能エネルギー事業への積極的な取り組みなどで先進的な地域として広く注目されています。2023年3月には、三ッ輪ホールディングスを含む民間企業数社とともに、村の豊かな自然が生み出すエネルギーを電力として活用し村内で循環させることを目的とした「西粟倉百年の森林でんき株式会社」を設立しました。村の脱炭素化に向けて様々な施策を推進する西粟倉村役場のお二人に当社との協業についてお話を伺います。
西粟倉村では脱炭素先行地域として以前から積極的に再生可能エネルギーの活用に取り組まれていますが、本格的に脱炭素を推進していくきっかけや、地域として持っていた課題意識についてお伺いできますか。
上山:
もともと、「村を脱炭素化していこう」という切り口でスタートしたわけではないんです。百年の森林構想※1を推進していく中で、低炭素な地域づくりのための森林整備や再エネ活用に取り組んできましたが、水力発電所の老朽化などもあり、経済的な課題は常にありました。2050年に向けてカーボンニュートラルを実現していこうという国としての流れの中で、ようやく脱炭素の推進を収益に繋げ、それを自治体へ還元できる流れができてきたのかなと思います。
2022年には脱炭素先行地域として国に採択され、取り組みを推進していくためには今ある施策だけではなく次に何をやるかを常に考え、高いKPIを達成していく必要があります。そのため、住民の理解を得ながらどのように結果を出していくかについては課題意識を持っていました。
白籏:
上山の言う通り、村としては何をやるにも経済的な課題が大きな障壁となっている現状がありました。これまで他の自治体などと比べても積極的に脱炭素に取り組んできたという自負があったので、国の推進する脱炭素関連の制度や仕組みを活用したい、という気持ちがありましたが、実際に採択されるには高いハードルをクリアしなければなりません。
明確な解がない中で脱炭素を推進していくにあたり、村だけではなく、専門的な知見と複眼的な視点をもたらしてくれる協業パートナーの必要性を感じていました。
そんな中、どのようなきっかけで三ッ輪ホールディングスグループと出会われたのでしょうか。
上山:
西粟倉村をはじめローカルで広く事業展開をするエーゼログループとの「電力のふるさと納税」の取り組みがきっかけで、ご紹介いただきました。
パートナーとして一緒に脱炭素に取り組もうと思ってくださったポイントをお聞かせいただけますか?
上山:
脱炭素先行地域に採択されてから、取り組みを推進していくために他にも何社かの企業とお話をさせていただきましたが、三ッ輪グループから「プレーヤーとして自社の社員を西粟倉村に派遣する」という話を聞いたときは驚きました。人材だけではなく、資金も投下して徹底的にコミットする姿勢を見せてくれたのは三ッ輪グループだけでしたね。

その後、エーゼロ主催のTAKIBIプログラムをはじめとした地域の活動にも参加してもらったりしながら交流を深め、村のことをよく理解していただけた感覚がありました。
民間企業と協業される際に、気にされるポイントはどういうところでしょうか。
上山:
いちばんは「当事者意識を持って地域と共に動いてくださるかどうか」という点です。会社の歴史や実績などのバックグラウンドはもちろん安心材料にはなりますが、所謂コンサルティングではなく、「主体的に責任感を持って事業を推進してくれる気持ちがあるかどうか」という観点を大切にしています。
白籏:
脱炭素や再エネの取り組みはすぐに軌道に乗るものではないので、行政としては長期で伴走してくれるパートナーを求めています。
リスクをとってプレーヤーとして地域に入ってくれる、という点は非常に安心感がありました。また、前述のように経済的な課題は常について回るので、一緒にビジネスとしての収益をしっかり出していこう、という姿勢も頼もしかったです。
実際に協業してみて、率直な感想はいかがですか?
上山:
実際にはまだプロジェクトが動き始めたばかりなので、これから本格的な取り組みに着手していくところです。
脱炭素先行地域としての西粟倉村の取り組みは環境省からも注目されていて、横展開できることを期待されています。社会的にも意義の高い汎用モデルとして広げていけるようにしたいですね。
白籏:
まずはPPAの余剰電気を地域にしっかりと還元していく仕組みをつくっていきたいと思っています。村としてだけでなく、一般家庭(村民)でもPPA事業を拡大し、脱炭素の取り組みを拡大していければと考えています。
現時点で感じている成果や、これからへの期待などもお聞かせいただけますか。
上山:
「西粟倉百年の森林でんき株式会社※2」を設立できたことで、まずはスタートラインに立てたのかなと思っています。
2050年の脱炭素達成に向けて行政だけで取り組みを推進し続けていくことは難しく、民間企業の活力が必要です。持続的な事業モデルを構築し、推進していくための母体ができたことは現時点での一つの成果と言えるのではないでしょうか。住民を含む需要家の皆さまに「百森でんきができてよかった」と思っていただけるように、引き続き三ッ輪グループの知見とノウハウを共有いただきながら、地域にメリットを還元していきたいと思っています。
白籏:
今回の「百森でんき」設立も含め、環境省や脱炭素選考地域の選考委員会などの外部からは「なぜ西粟倉村ではいつも先進的な取り組みが生まれるのか」という問い合わせのほか講演依頼なども多くいただいています。

我々の取り組みについて高く評価していただけているからこそ、汎用性の高いモデルの構築やその横展開というのは我々の使命だとも思っています。他の自治体にとっても役立つ事例になれば嬉しいです。
最後に、これからの展望や目指したい地域の姿などについて教えてください。
上山:
まずは「百森でんき」の活動の成果を、地域の皆さまの生活の中に感じられるようにしていくことです。我々が目指す地域の未来に向けて、これからも協業パートナーのみなさんと共に歩んでいきたいと思っています。

地域の中でのエネルギー地産地消を実現するために、脱炭素に関する新たな技術や知見を三ッ輪グループから都度インプットしながら、脱炭素先行地域の事業も含め一緒に推進していければと思います。
脱炭素やエネルギーというテーマは様々な地域課題と密接に関係しているからこそ、引き続き多角的な視点からお力添えいただけることを期待しています。
白籏:
脱炭素先行地域の計画の中では、令和7年に道の駅を大幅改修するとともに、太陽光・蓄電池・小型風力発電の整備を予定しています。脱炭素を推進していくにはあらゆる再エネの導入が必要です。
西粟倉村ならではの再エネ推進、活用の方法についても三ッ輪グループの皆さんと一緒に考えていけたらと思います。

また、西粟倉村での取り組みは国や環境省からも注目されているからこそ、ここでの課題意識は重要視してもらえるのではないかと期待もしています。取り組みの中での気づきを国全体の脱炭素推進施策にも活かしていくことで、メニュー作りの提言などにも繋げていけたら。
国全体のグリーン成長戦略や、他の分野にも良い波及効果を及ぼしていけるような活動を目指したいですね。